天皇および皇族は、職業選択の自由や居住移転の自由、言論の自由など自己決定権にかかわる多くの人権を制限されており、また、プライバシーを侵害されることもあることから、これら非自然人的立場から解放するためにも天皇制そのものを廃止すべきだと主張する立場(この思想は天皇解放論とも呼ばれる)。
このことで「皇室は治外法権」という指摘もある。平成期の廃止論はこれが主流である。。天皇制を含め君主制は人権侵害だという批判の例として以下が挙げられうる。天皇・皇族はマスコミに追い回されて仮にいやな思いをしても笑顔を絶やさないことが求められる。
イギリス王室の子息はスパルタ教育の寄宿生学校やサンドハースト陸軍士官学校に入れられ、戦時には最前線に出征することが求められる。また、エリザベス女王は王位継承権第1位に決まったとき、人前で感情を露わにすること(声を出して笑ったり泣いたり)が禁じられたなどである(『世界ふしぎ発見』で扱われた)。
さらに、フィクションではあるが『ローマの休日』の王女が過密スケジュールと自由のない生活でヒステリーを起こしたこともこのような例を象徴している。
封建制・身分制の名残への反発 [編集]
特定家系への敬意の押し付けは国民を大日本帝国憲法下での臣民とさほど変わらぬ位置に置くのと等しく、時にはそのために批判が行いにくい状況が発生することを危惧する立場。また、皇室の家族制度のあり方が旧民法の家制度と同一とする立場である。
日本国憲法において天皇の地位は「日本国及び国民統合の象徴」(第1条)であると規定されているが、日本国民の平均的な生活とおよそ懸け離れた生活を送っている天皇を「日本国の象徴」とすることや「天皇」という身分が世襲によって受け継がれることを疑問とする意見もある。部落解放同盟の指導者松本治一郎は「貴族あれば賤族あり」と言っている。
平等性の観点 [編集]
国民が就職に苦労し、常に失業の危険に脅かされているのに比べ、天皇や皇族が生まれながらにして一定の職務と生活水準とを保障されているのは不平等であり(極端な形の世襲の“国家公務員”)、また、天皇一族のためのみに存在する宮内庁は公務員の地位について定めた日本国憲法第15条違反であると批判する立場。
税制の観点 [編集]
毎年、皇族の生活資金や公務費、約1000人存在する宮内庁の職員の人件費、また皇居の維持補修費などに巨額の税金が投入されており、その点を税金の活用方法として有効でない、または税金の無駄であると批判する立場。
宗教上の観点 [編集]
天皇は日本神話や神道儀礼と不可分一体の関係にあることから、天皇を国家体制の一部とすることは日本国憲法で保障された政教分離や信教の自由に違反すると批判する立場。ちなみに、天皇という呼称は神道では「スメラノミコト」、「スメラギノミコト」とも呼び、「スメラ=統べる」、「ミコト=カミ」、つまり「統べるカミ=統治、君臨するカミ」、という意味である。これが戦前の天皇制の最大の根拠であった。
宗教別にみると以下のような特徴が見られる。
仏教
仏教を開祖釈迦はシャカ族の王子として生まれたが、厳格な身分制度に嘆き出家して覚りを開いてカースト制度を否定したことで知られる。そのことから、仏教徒の一部には天皇制に反対する者がいる。
しかし、仏教国で君主制が続いている国も多く存在することや、仏教の僧侶が自分の子に住職の跡継ぎを期待する風潮。さらには、我が国への仏教伝来時から天皇、皇族、朝廷の長らく且つ多大な信仰、神仏習合の慣例により日本仏教が興隆しているので、その矛盾は否めない。
公明党の支持基盤の創価学会の創立者・牧口常三郎は戦前に治安維持法違反・不敬罪の容疑で逮捕され、取り調べで「国家が隣組その他それぞれの機関或いは機会に於いて国民全体に奉斉せよと勧めております処の伊勢大廟から出される天照皇太神大麻を始め明治神宮、靖国神社、香取鹿島神宮等その他各地の神宮・神社の神札、守札やそれ等を祭ってある例えば荒神様とか稲荷様、不動様という祠等一切のものを取払い、焼却破棄しています。(中略)もちろんこれ等の神宮神社仏寺等への祈願の為参拝することも謗法でありますから、参拝しない様に、謗法の罰は重いから、それを犯さないように指導しているのであります。」と述べた。
このように牧口は自らの信仰を守り、1944年11月に東京拘置所内で死んだ。
キリスト教
弓削達(元フェリス女学院大学学長)、福田歓一らキリスト教徒の学識者によって天皇制廃止論が唱えられた。
1927年創立のWatch Tower(日本燈台社:現在のものみの塔)の日本支部員の3名が1939年に召集され、「天皇は元来宇宙の創造主ヱホバに依り造られたる被造物にして、現在は悪魔の邪導下にある地上の一機関に過ぎざるが故に、天皇を尊崇し、天皇に忠誠を誓う等の意思は毛頭なき」ことなどを述べ、不敬罪に問われた[7]
神道
大本の「十二段返しの歌」という七五調の宣伝歌の四段目を右から左に読むと「綾部に天子を隠せり」、八段目を左から右に読むと「畏多くも、今の天子偽者なり」とあった。出口王仁三郎は不敬罪・治安維持法違反で起訴され、裁判では出口は関与を否定したが不敬罪で有罪となった。
教団の綾部・亀岡の聖地はダイナマイトで破壊された。逮捕された信者のうち16名が拷問で死亡した。大本事件参照。
イスラム教
イスラム教国、特にアラビア半島にはカリフ、スルタン、首長などと呼ばれる君主のもとで、いまだに選挙制度が導入されず、伝統的な専制君主制が続いている国が多い。しかしながら、日本の天皇との関連では、天皇は現人神とされたため、「いかなる場合においても神が人間として現れることはない」というイスラム教の考え方との矛盾が生じる。
戦前、日本がインドネシア(大半がイスラム教徒)を統治していたころ、皇居の方角へ向かって拝む「東方遥拝」を強制したため、国際的な批判があった。
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